掘削面の高さが2m以上となる地山の掘削作業では、作業主任者の選任が法律で義務付けられている。この作業主任者になるには「地山の掘削及び土止め支保工作業主任者技能講習」の修了が必要だ。
土砂崩壊による労働災害は建設現場で繰り返し発生している。作業主任者は崩壊リスクを現場で直接管理する役割を担う。資格の取得要件・講習内容・職務の範囲を正確に把握しておくことは、安全管理者にとって基本的な責務である。
本記事では、地山掘削作業主任者の法的根拠から技能講習のカリキュラム、作業主任者の職務と配置基準まで、実務で必要な情報を整理する。
地山掘削作業主任者は、労働安全衛生法に定める「作業主任者」の一種である。掘削面の高さが2m以上になる地山の掘削作業において、事業者が選任しなければならない。
地山(じやま)とは、人工的な盛土や埋め立て地ではなく、自然のままの地盤を指す。道路工事・基礎工事・上下水道工事・宅地造成工事など、土砂を掘り下げる場面で広く適用される。
地山掘削と土止め支保工は一体の技能講習として設定されている。正式名称は「地山の掘削及び土止め支保工作業主任者技能講習」であり、修了者は地山掘削作業主任者と土止め支保工作業主任者の両方に選任できる。
地山掘削作業主任者の根拠は、労働安全衛生法と労働安全衛生規則の複数の条文にまたがっている。
安衛則第355条から第367条は「明り掘削の作業」に関する安全基準をまとめている。掘削時の崩壊防止措置、浮石・き裂の確認義務、掘削機械の運行経路の制限など、作業主任者が現場で管理すべき事項の根拠がここに集約されている。
地山掘削作業主任者の選任が必要な作業は、安衛令別表第7の規定に基づく。主な条件は以下のとおりである。
| 作業の種類 | 作業主任者が必要となる条件 | 根拠 |
|---|---|---|
| 地山の掘削作業 | 掘削面の高さが2m以上となる作業 | 安衛則第359条 |
| 土止め支保工の作業 | 切りばり・腹おこしの取付け・取外しの作業 | 安衛則第374条 |
出典:労働安全衛生規則(最終改正:令和5年厚生労働省令第37号)
「掘削面の高さ」は、掘削の最深部から上端までの垂直距離を指す。複数の段切りで掘削する場合は、全体の高さが判断基準となる場合がある。現場での実態を踏まえた判断が求められる。
掘削と同時に土止め支保工を施工する場合、同一の作業主任者が両方の職務を兼ねることができる。技能講習が「掘削及び土止め支保工」として一体化されているのはこのためだ。現場では一人が両方の作業主任者として選任されるケースが一般的である。
「地山の掘削及び土止め支保工作業主任者技能講習」を受講するには、定められた実務経験が必要である。受講コースは実務経験年数と学歴によって2種類に分かれる。
| コース区分 | 受講要件 | 実務経験 |
|---|---|---|
| 通常コース | 地山掘削または土止め支保工の作業に従事した経験を有する者 | 3年以上 |
| 免除コース | 大学・高専・高校等で土木・建築・農業土木の学科を専攻して卒業した者 | 2年以上 |
出典:建設業労働災害防止協会各支部 技能講習案内
土木・建築・農業土木に関する学科を卒業した者は、実務経験2年以上で受講できる。また、すでに一定の関連資格を保有している場合、科目の一部が免除されるコースが設けられている機関もある。詳細は受講を予定している登録教習機関に確認する。
技能講習は都道府県労働局長の登録を受けた機関が実施する。建設業労働災害防止協会(建災防)の各都道府県支部が主な実施機関である。キャタピラー教習所など民間の教習機関でも受講できる。居住地や勤務地に近い機関を選ぶと効率的だ。
技能講習は学科講習のみで構成されており、実技講習はない。通常コースは3日間、約17時間の学科講習を受講する。
| 講習科目 | 主な内容 | 時間数(通常コース) |
|---|---|---|
| 作業の方法に関する知識 | 地山の種類・性質、掘削の方法、崩壊防止措置、土止め支保工の組立・撤去、浮石・き裂の確認方法 | 10時間30分 |
| 工事用設備・機械・器具・ 作業環境等に関する知識 |
掘削機械・土止め支保工材料の種類と性能、作業環境の管理(有害ガス・酸素欠乏等) | 3時間30分 |
| 労働衛生に関する知識 | 粉じん障害防止、熱中症対策、作業主任者としての健康管理 | 1時間30分 |
| 関係法令 | 労働安全衛生法・安衛則の掘削関連規定、作業主任者制度の概要 | 1時間30分 |
出典:建設業労働災害防止協会「地山の掘削及び土止め支保工作業主任者技能講習」案内資料
合計の学科時間数は約17時間である。3日目の最後に修了試験が実施される。標準的なスケジュールは、1日目・2日目が9:00〜17:15、3日目が9:00〜13:15(試験は12:15〜13:15)となっている。
3日目の最後に修了試験が実施される。試験は学科のみで、講習で学んだ4科目から出題される。
| 試験形式 | 内容 |
|---|---|
| 出題形式 | 選択式(多肢択一)が中心 |
| 出題範囲 | 講習4科目(作業方法・設備知識・労働衛生・関係法令) |
| 合格基準 | 各科目40点以上、総合60点以上(実施機関によって基準が異なる場合がある) |
| 不合格の場合 | 再受験が可能。実施機関の定める手続きに従う |
修了試験に合格すると、技能講習修了証が交付される。修了証に有効期限はない。ただし、法令改正や技術の変化に対応するため、定期的な自己研鑽が求められる。
技能講習を修了し選任された後、地山掘削作業主任者は安衛則第360条に基づく職務を果たさなければならない。職務を怠った場合、事業者と作業主任者の双方が責任を問われる可能性がある。
| 職務 | 具体的な内容 |
|---|---|
| ①作業方法の決定と直接指揮 | 掘削の順序・方法・使用機械を決定する。作業員に直接指示を出し、危険な手順が行われていないか監視する |
| ②器具・工具の点検と不良品の除去 | スコップ・ツルハシ・土止め部材などを始業前に点検する。亀裂・変形・腐食のある部材は使用禁止とする |
| ③保護具の使用状況の監視 | 要求性能墜落制止用器具(安全帯)と保護帽の着用状況を確認する。未着用の作業員に対して着用を指示する |
出典:労働安全衛生規則第360条
法定の3職務に加え、安衛則の関連規定が求める実務的な確認事項がある。作業主任者が日常的に実施すべき内容を整理する。
同一の技能講習を修了した者は、土止め支保工作業主任者にも選任できる。土止め支保工作業主任者の職務は安衛則第375条に規定されている。切りばり・腹おこしの取付け・取外しの作業を直接指揮すること、材料の欠点の有無を確認し不良品を取り除くことが主な内容だ。
地山掘削作業主任者として選任された後、実際の現場では作業手順書・リスクアセスメント・安全パトロール記録の作成が求められる。これらの書類作成を効率化するツールを紹介する。
掘削作業・土止め支保工に対応した作業手順書・KY表・リスクアセスメントをAIが自動生成する。作業主任者が確認すべき危険要因を網羅した書類を短時間で作成できる。
AI安全書類自動生成ツールを見る地山掘削作業主任者について、本記事の要点を整理する。
地山の掘削作業は、土砂崩壊による死亡災害が繰り返し発生している危険な作業である。作業主任者の選任は最低限の法的要件であり、選任した主任者が実際に職務を果たす体制を整えることが、現場の安全管理者に求められる本質的な責任だ。
作業内容を入力すると、掘削・土留め作業の危険源と対策をAIが提案。土砂崩壊・酸欠等のリスク評価を効率化。