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建設業の安全衛生計画書の書き方
【年間・月間テンプレート】

2026年3月4日  |  読了目安 10分  |  安全管理者・現場監督 向け

安全衛生計画書とは何か、なぜ必要か

安全衛生計画書とは、事業場や工事現場において労働災害を防止するための具体的な目標・活動内容・実施スケジュールをまとめた文書です。労働安全衛生法に基づく安全衛生管理体制の中核をなす書類であり、建設業ではとくに重要視されています。

なぜ今、計画書の精度が問われているのか。数字を見ると状況の深刻さが分かります。

232
建設業の死亡者数(2024年)
出典:厚生労働省「2024年労働災害発生状況」
31%
全産業に占める建設業の割合
出典:厚生労働省(2024年確定値)
77
墜落・転落による死亡者数(2024年)
出典:厚生労働省(2024年確定値)

2024年の建設業死亡者数は232人で、全産業の31.1%を占め、業種別で最多でした(厚生労働省「2024年労働災害発生状況」)。うち墜落・転落が77人と死亡災害の3割以上を占めます。第14次労働災害防止計画(2023〜2027年度)では、建設業の死亡者数を2022年比で15%以上削減することが数値目標として設定されています(厚生労働省)。

この目標を現場レベルで達成するための出発点が、実効性のある安全衛生計画書の作成と運用です。

作成義務について
安全衛生計画書の作成は、労働安全衛生法第28条の2(危険性または有害性等の調査)および安全衛生マネジメントシステム(COHSMS)の指針に基づき推奨されています。建設業では元請が下請に計画書の提出を求めるケースが一般的であり、全建統一様式第6号が広く使用されています。

年間計画と月間計画の違いと役割分担

安全衛生計画には大きく「年間計画」と「月間計画」の2種類があります。それぞれの目的と粒度を整理してから作成すると、全体像が明確になります。

区分 対象期間 主な記載内容 作成タイミング
年間計画 1年間(工事全体または年度) 安全衛生方針、年間目標、重点施策、定期行事スケジュール 年度初め・工事着工時
月間計画 当月 月間目標、週別実施内容、担当者、進捗確認欄 毎月末〜翌月初め

年間計画は「どこへ向かうか」を示す羅針盤、月間計画は「今月何をするか」を管理する行動計画と考えると分かりやすいでしょう。年間計画で定めた方針や目標を月間計画に落とし込み、毎月のPDCAサイクルで実績を積み重ねていきます。

年間安全衛生計画書の書き方と項目解説

年間安全衛生計画書には、以下の構成要素を盛り込むのが標準的です。厚生労働省・長野労働局が公開する「安全衛生年間計画書」様式(令和6年2月改訂)も同様の構成を採用しています。

1. 安全衛生方針

経営トップまたは現場所長の名前で宣言する基本方針です。抽象的なスローガンではなく、当該工事・年度の実態を踏まえた言葉で記載します。

記載例:安全衛生方針

「本工事においては、すべての作業員の安全と健康を最優先とし、墜落・転落災害ゼロを最重点目標として安全衛生活動を推進する。リスクアセスメントの徹底と作業手順の遵守により、計画的・継続的な災害防止に取り組む。」

令和○年○月○日 現場代理人 ○○ ○○

2. 安全衛生目標

方針を受けて、測定・検証できる具体的な数値目標を設定します。「ゼロ災害」だけでは評価基準があいまいになるため、後述するアウトプット指標を必ず組み合わせます。

3. 重点実施事項

目標達成に向けた具体的な施策です。当該工事のリスクアセスメント結果を踏まえ、3〜5項目に絞り込みます。項目が多すぎると管理が形骸化するため、優先度を明確にすることが重要です。

4. 年間行事・活動スケジュール

月別の定期活動(安全大会、健康診断、各種点検日など)を一覧化します。国の定める安全衛生週間との整合を取ることも実務上のポイントです。

定期行事・活動内容 担当
4月 工事安全開始式、年間計画説明会、新規入場者教育徹底 安全管理者
5月 熱中症対策開始(WBGT計測体制構築)、足場点検 安全担当・職長
6月 安全衛生週間(第1週)、安全パトロール強化月間 全員
7〜8月 熱中症対策強化、水分補給記録確認 安全担当
9月 安全衛生週間(全国)、中間評価・計画見直し 安全管理者
10月 定期健康診断、産業医面談 衛生管理者
11月 墜落防止総点検、高所作業手順再確認 安全担当・職長
12月 年末安全点検、年間実績集計 安全管理者
1月 年始安全大会、次年度計画骨子作成 所長・安全管理者
2〜3月 工事完了前安全点検、年間反省・改善計画策定 安全管理者

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月間安全衛生計画書の書き方と実用テンプレート

月間計画は、年間計画で定めた方針・重点事項を当月の工程に合わせて具体化する文書です。工程の進捗に応じてリスクが変わるため、先月の実績と翌月の工程予定を踏まえて毎月更新します。

月間計画の主な記載項目

月間安全衛生計画書テンプレート(骨格)
重点実施事項 具体的な実施内容 担当 実施確認
第1週 今月の重点事項周知
(朝礼・KY活動)
月間計画の読み合わせ、新規入場者確認 職長 □ 完了
第2週 足場・開口部の総点検 点検チェックリスト使用、不備箇所即時補修 安全担当 □ 完了
第3週 ヒヤリハット収集・共有 ヒヤリハット報告書の提出促進、朝礼で事例共有 職長・安全管理者 □ 完了
第4週 月間実績集計・評価 目標達成状況確認、未達項目の原因分析・翌月対策立案 安全管理者 □ 完了

このテンプレートは骨格例です。工事規模・工程に応じて項目を追加・変更してください。

実務上のポイント
月間計画書は月末の職長会議や安全委員会で承認・配布します。現場の掲示板や安全衛生ファイルに綴じて作業員全員が参照できる状態にしておくことが、形骸化防止の基本です。

重点実施事項と目標数値の設定方法

重点実施事項の絞り方

重点実施事項は「すべての危険に対応する」ではなく、「当該現場で最もリスクが高い作業に集中する」という発想で設定します。そのためにはリスクアセスメントの結果が出発点になります。

  1. リスクアセスメントで危険因子を洗い出す 作業ごとにリスクの種類・発生可能性・重篤度を評価し、優先順位付けを行う。
  2. 過去の災害・ヒヤリハットを参照する 自社・類似現場の事故事例と、建設業労働災害防止協会(建災防)が公表している統計を確認し、業界全体の傾向と自現場の特徴を照合する。
  3. 第14次労働災害防止計画との整合を確認する 国の計画では墜落・転落防止と熱中症対策が重点対策として挙げられている。これらは必須項目として盛り込む。
  4. 3〜5項目に絞り込む 項目が多すぎると管理が難しくなり、計画書が形骸化する。現場規模に応じて3〜5項目程度が実務的な上限。

目標数値の決め方

目標数値は「測定できる」「達成可能である」「期限が明確である」の3点を満たす必要があります。アウトカム指標(結果)とアウトプット指標(活動量)の両方を設定するのが効果的です。

指標の種類 具体的な数値目標の例 測定方法
アウトカム指標
(結果を示す)
・休業災害ゼロ
・ヒヤリハット報告件数 月間10件以上
・リスクアセスメント実施率 100%
労働災害報告書
ヒヤリハット集計表
アウトプット指標
(活動量を示す)
・安全パトロール 週1回以上
・新規入場者教育 実施率 100%
・TBM-KY実施率 95%以上
実施記録台帳
安全日誌
やりがちなNG例
「安全意識の向上」「積極的な安全活動の推進」のような抽象的な目標は、達成したかどうかの判断ができません。目標は必ず数値・回数・率などで表現し、誰が見ても達成基準が明確な形にすること。

建設業で押さえるべき重点実施事項の例

リスク分類 重点実施事項(例) 根拠・参照
墜落・転落 フルハーネス型墜落制止用器具の着用徹底、足場の作業前点検 建設業死亡災害の約33%(2024年)
熱中症 WBGT値の毎時計測と作業中断基準の設定、水分補給記録 第14次労働災害防止計画 重点対策
重機・車両 重機作業範囲への立入禁止措置、誘導員配置基準の明確化 建災防「建設機械による災害防止」
倒壊・崩壊 掘削・法面の毎日点検、支保工の計算書確認 土工事リスクアセスメント
健康管理 定期健康診断受診率100%、長時間労働の月次確認 労働安全衛生法第66条

PDCAサイクルの回し方と評価・改善のポイント

計画書を作って終わりでは意味がありません。厚生労働省が推奨する安全衛生マネジメントシステムでも、PDCA(計画・実施・評価・改善)の継続的な運用が核心とされています。

P
Plan(計画)
リスクアセスメント結果・前年度実績をもとに年間・月間計画を作成。目標と担当者を明確化。
D
Do(実施)
計画に基づき安全活動を実施。KY活動・パトロール・教育の実施状況を記録に残す。
C
Check(評価)
月1回は目標達成度を数値で確認。ヒヤリハット件数・パトロール実施率などを集計・比較。
A
Act(改善)
未達項目は原因を分析し、翌月計画に具体的な対策を落とし込む。改善内容は全員に共有。

四半期評価・年間総括のやり方

月次のPDCAに加えて、四半期(3ヶ月)ごとに中間評価を実施することが推奨されています(厚生労働省「安全衛生マネジメントシステムに関する指針」)。評価の際は以下の観点を確認します。

年間総括では、数値実績とともに「計画書の有効性そのものへの評価」を行い、翌年の計画立案に反映させます。「何が効果的だったか」「どの施策が形骸化していたか」を言語化することが継続的改善の鍵です。

計画書を形骸化させないための3つの原則

原則 具体的な行動
見える化 計画書と実績を現場事務所・休憩所の掲示板に貼り出す。進捗グラフで全員が達成状況を把握できるようにする。
全員参加 計画の内容を朝礼・TBMで毎週周知する。作業員がヒヤリハット報告や改善提案に参加できる仕組みを整える。
記録の一元化 計画書・実施記録・評価シートを同じファイルまたはシステムに綴じ、誰でも参照・更新できる状態を保つ。
デジタル化のメリット
安全書類をデジタル管理するツールを導入すると、月間計画の更新・配布・実績記録の集計が大幅に効率化されます。紙ベースでの作業では作成・整理に月数時間かかる作業が、数十分に短縮できるケースもあります。

まとめ:実効性のある計画書を作るための要点

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