データ解説

建設業の労働災害統計【最新版】
死亡事故の原因と対策

公開日:2026年3月4日  |  対象:安全管理者・経営者

建設現場は、他業種に比べて依然として高い死亡リスクを抱えている。令和6年(2024年)の厚生労働省統計では、建設業の死亡者数が全産業で最も多く、かつ前年から増加に転じた。

本記事では、最新の公式統計データに基づき、建設業における労働災害の全体像・事故類型・月別傾向を整理したうえで、安全管理者・経営者が今すぐ着手できる具体的な対策を解説する。

令和6年の建設業労働災害:全体概況

厚生労働省が2025年5月に公表した「令和6年における労働災害発生状況(確定値)」によると、建設業の主要指標は以下のとおりである。

232
建設業 死亡者数(令和6年)
前年比 +9人(+4.0%)
13,849
建設業 死傷者数(休業4日以上)
前年比 −565人(−3.9%)
31.1%
全産業死亡者数に占める
建設業の割合
745
全産業 死亡者数(令和6年)
過去最少水準

全産業で見れば死亡者数は過去最少水準が続いているが、建設業に限ると令和6年は前年(223人)から9人増加し232人に達した。休業4日以上の死傷者数は約1.4万人と微減したものの、死亡件数が増加に転じた点は見逃せない。

注目:建設業の死亡者数は全産業の約3割を占め、製造業(142人)・陸上貨物運送事業(108人)を大幅に上回る。就業者数比で見ると、建設業の死亡リスクは他産業より著しく高い状態が続いている。

厚生労働省の「第14次労働災害防止計画」(令和5〜9年度)では、建設業における死亡災害を令和9年までに令和4年比15%以上削減することを数値目標に掲げているが、令和6年の増加はその達成に向けた取り組みの加速を強く促す結果となった。

事故類型別データ:何が命を奪っているか

令和6年の建設業における死亡災害232人を事故の型で見ると、「墜落・転落」が77人(約33%)と突出して多く、以下の順となっている。

事故の型 死亡者数(令和6年) 構成比 割合(視覚化)
墜落・転落 77人 約33%
最多
はさまれ・巻き込まれ 約35人 約15%
飛来・落下 約22人 約10%
崩壊・倒壊 約20人 約9%
建設機械・クレーン等 約18人 約8%
交通事故(道路) 約17人 約7%
その他・不明 約43人 約18%

※墜落・転落(77人)は確定値。その他の類型は令和6年発生状況確定値および令和5年比率をもとにした推計値。出典:厚生労働省「令和6年における労働災害発生状況」

墜落・転落が長年にわたり最多の理由

建設現場では、足場・開口部・屋根・はしごなど、高所作業を伴う工程が避けられない。全国仮設安全事業協同組合(ACCESS)の調査でも、足場からの墜落・転落が建設業死亡災害の約40%前後を占め続けていることが示されている。

特に問題となるのが「フルハーネス型安全帯の未着用」「作業床の未設置・不備」「開口部の養生不足」の三点であり、これらはいずれも安全書類(作業手順書・KY活動記録)への落とし込みが不十分な現場で多発する傾向がある。

「飛来・落下」「崩壊・倒壊」の危険性

飛来・落下と崩壊・倒壊は合計で全死亡の約19%を占める。特に近年、自然災害後の復旧・復興工事や解体工事の増加に伴い、不安定な地盤や構造物に関わる崩壊リスクが高まっている。建設業労働災害防止協会(建災防)の事例集でも、令和6年の復旧工事現場での崩壊・埋没事故が複数報告されている。

死亡者数の長期推移と課題

建設業の死亡者数は昭和33年の数千人規模から長期的に減少してきた。直近5年の推移は以下のとおりである。

年度 建設業 死亡者数 前年比 建設業 死傷者数(休業4日以上)
令和2年(2020年) 258人 約14,977人
令和3年(2021年) 288人 +30人 約14,828人
令和4年(2022年) 281人 −7人 約15,458人
令和5年(2023年) 223人 −58人 14,414人
令和6年(2024年) 232人 +9人 13,849人

出典:厚生労働省「労働災害発生状況」各年確定値、建設業労働災害防止協会「建設業における労働災害発生状況」

令和5年は58人という大幅な減少を記録したが、令和6年はその反動もあり再び増加した。一方、休業4日以上の死傷者数は5年連続で減少傾向にあり、軽微な事故の件数自体は改善している。つまり、死亡に至る重篤事故の防止が引き続き最大の課題となっている。

背景として押さえておきたい構造的要因:技能実習生・外国人労働者の増加、高齢化による現場作業者の体力・反応速度の低下、工期短縮や人手不足による安全管理の手薄さ、の3点が複合的に作用していると専門家は指摘している。

月別・季節別の災害発生傾向

建設業の労働災害には、一定の季節的な偏りがある。建災防の月別統計や各労働局のデータを参照すると、以下のような傾向が確認できる。

建設業における労働災害発生傾向(月別・相対イメージ)

1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月

※赤は特に多発が報告されている時期。棒グラフは相対的な傾向を示すイメージ図であり、実際の月別確定値とは異なる場合がある。

3月(年度末)が最も警戒が必要な時期

建災防が毎年3月1日〜31日を「建設業年度末労働災害防止強調月間」と定めていることからも明らかなとおり、年度末は工期集中・突貫工事により作業密度が急増する。その結果、安全確認の省略や疲労蓄積による判断ミスが重なり、災害が多発しやすい。

夏季(7〜8月)は熱中症との複合リスク

夏季は熱中症による死傷とそれに伴う転落・転倒が同時多発するリスクがある。令和6年においても熱中症による建設業の死傷者数は依然として多く、厚生労働省は別途「職場における熱中症による死傷災害発生状況」を公表するほどの重要課題となっている。

事故類型別に見る実践的対策

墜落・転落対策

死亡災害の約3割を占める墜落・転落を防ぐには、「設備的対策」と「管理的対策」の両輪が不可欠である。

飛来・落下対策

崩壊・倒壊対策

はさまれ・巻き込まれ対策(建設機械)

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安全書類の整備が対策の土台になる

上記のような現場対策を継続的に機能させるには、安全管理を「書類化・記録化」するプロセスが不可欠である。安全書類には大きく3つの役割がある。

  1. リスクの可視化
    作業手順書・リスクアセスメントシートに危険箇所と対策を明記することで、担当者が変わっても安全水準が維持される。
  2. 法令遵守の証跡
    労働安全衛生法・同施行規則は、足場点検記録・特別教育修了証・KY活動記録の保存を事業者に義務付けている。書類が整備されていなければ、監督署の指導・停止命令の対象になりうる。
  3. 事故後の原因究明と再発防止
    災害調査では作業前の記録が不可欠な根拠資料となる。記録が残っていれば「なぜ対策が機能しなかったか」を構造的に分析できる。

しかし現場の実態として、書類作成に割ける時間は限られており、「毎日のKY記録が形骸化している」「手書きのリスクアセスメントをコピー流用している」といった課題を多くの現場が抱えている。

AIを活用した安全書類作成の現実的なメリット

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さらに、事故・ヒヤリハットの原因分析には、因果分析ツール「WhyTrace」との組み合わせが有効である。発生した事象の背景要因を体系的に掘り下げることで、表面的な対策に留まらない再発防止策の立案を支援する。

まとめ

令和6年の建設業労働災害統計から読み取れる現状を整理すると、次の3点に集約される。

第14次労働災害防止計画では令和9年までに死亡者数15%以上の削減が目標に掲げられているが、現状はその水準に達していない。目標を達成するには、現場の設備的対策・教育的対策に加え、安全書類の継続的な整備と記録の実践が欠かせない。

一件の重篤事故が、被災した作業者・家族・企業すべてに深刻な影響を与える。統計の数字を「自社現場の現実」として受け止め、今日から具体的な対策を講じてほしい。

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主要出典・参考資料

・厚生労働省「令和6年における労働災害発生状況(確定値)」(2025年5月30日公表)
  https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_58198.html

・建設業労働災害防止協会「建設業における労働災害発生状況」
  https://www.kensaibou.or.jp/safe_tech/statistics/occupational_accidents.html

・建設業労働災害防止協会「各種労働災害防止運動の展開」
  https://www.kensaibou.or.jp/public_relations/various_canpain/index.html

・厚生労働省「労働災害発生状況」(各年版)
  https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/rousai-hassei/

※本記事中の推計値(飛来落下・崩壊倒壊・建設機械等の類型別死亡者数)は、令和6年確定値および過去年度の構成比をもとに算出したものです。確定の類型別内訳は上記厚生労働省公表資料の別添資料をご参照ください。

國分 良太

著者

國分 良太

制御設計エンジニア → AI・IoT・DX推進|AIコンサルタント|東京の製造業メーカー開発部門

製造業の現場で設備設計・改善プロジェクト・品質向上施策に従事。なぜなぜ分析(RCA)やリスクアセスメントの実務経験をもとに、現場DXを支援するアプリケーションの開発と情報発信に取り組んでいます。AIコンサルタントとして、企業のAI・生成AI活用や現場DX導入の支援も行っています。

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※ 本サイトは所属企業とは関係のない個人活動です。記載の見解は筆者個人のものです。

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