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作業指示書の書き方と記入例【建設現場テンプレート】

建設現場で毎日使う作業指示書。「何を書けばいいか分からない」「元請から書式を直すよう指摘された」という声は後を絶ちません。本記事では、必須記載項目・安全注意事項の書き方・元請提出用フォーマットの考え方を記入例付きで解説します。

なぜ今、作業指示書の精度が問われるのか

厚生労働省が2025年5月に公表した令和6年(2024年)の労働災害発生状況(確定値)によると、建設業の死亡者数は232人で全産業の31.1%を占め、業種別で最多でした。 死亡者のうち「墜落・転落」が77人と突出しており、死亡災害の約3割を占めています。

出典:厚生労働省「令和6年 労働災害発生状況について」(2025年5月公表)

建設業の死亡者数(令和6年確定値)
232人 全産業比 31.1%(業種別最多)
うち墜落・転落による死亡:77人(約33%)
出典:厚生労働省「令和6年 労働災害発生状況について」

これらの災害の多くは、「どの作業を・どの手順で・どんな安全措置を講じて行うか」が現場作業者に正確に伝わっていないことで起きています。 口頭指示だけで作業を進めた結果、安全帯の使用確認が抜け落ちた、立入禁止区画の設定が漏れたといった事例は現場でよく見られます。

また、元請の安全管理体制に対する監督署の監査が年々厳しくなっており、書類不備が是正勧告の理由になるケースも増えています。 作業指示書は現場の安全を守るための実務文書であり、同時に元請が安全配慮義務を果たしていることを証明する書証でもあります。

労働安全衛生法 第29条(元方事業者の義務)のポイント 元方事業者は、関係請負人及びその労働者が法令に違反しないよう、必要な指示を行う義務があります。作業指示書はこの「指示」を文書化したものです。

作業指示書の必須記載項目と法的根拠

作業指示書に法定の統一様式はありませんが、労働安全衛生法・同施行規則および「元方事業者による安全衛生管理指針」(厚生労働省)に基づき、以下の項目を網羅することが求められます。

区分 記載項目 記載のポイント
基本情報 工事名・作業日時・作業場所 「〇〇棟3階北側」のようにエリアを具体的に
発注者・責任者 元請会社名、作業指示者(職長・現場監督)、安全衛生責任者 氏名まで記入。省略すると責任の所在が不明確になる
作業内容・手順 作業種別、手順番号付き作業ステップ、使用機械・重機の名称 「鉄骨建方→ボルト仮締め→本締め」のように順番を明示
人員・職種 協力会社名、従事職種(鳶・土工・オペレータ等)、予定人数 人数は計画・実績を並記すると管理しやすい
安全措置 危険予知(KY)の対象リスク、保護具の種類・使用義務、立入禁止区画 「安全帯使用」ではなく「高さ2m以上の作業では必ずフルハーネス型安全帯を使用し、親綱に掛けること」と具体的に
緊急時対応 緊急連絡先、避難経路、応急処置の担当者 連絡先は電話番号まで記入。「担当者に確認」はNG
確認・承認欄 元請担当者のサイン・印鑑、下請職長のサイン 双方のサインがあることで指示の授受を証明できる
よくある抜け漏れ:安全衛生責任者名の未記入 労働安全衛生法第16条では、特定元方事業者の現場では下請各社が安全衛生責任者を選任する義務があります。名前を書かないまま提出すると、元請の安全巡視時に差し戻しになるケースが多いため注意してください。

安全注意事項欄の書き方と具体例

作業指示書の中で最も書き方に差が出るのが「安全注意事項」欄です。「安全に作業すること」「墜落注意」のような抽象的な記載は、実際の行動変容につながりません。 元請からも「具体的に書くように」と指摘されやすい箇所です。

抽象的な書き方 vs 具体的な書き方

悪い例(抽象的) 良い例(具体的・行動レベル)
墜落に注意すること 高さ2m以上での作業はフルハーネス型安全帯を着用し、作業開始前に親綱への掛け替えを確認すること
重機に近づかないこと バックホウの旋回半径(最大5m)内への立入りを禁止し、オペレータとの合図を作業開始前に確認すること
適切な保護具を着用すること 溶接作業中は遮光溶接面(JIS T 8141)・革手袋・溶接用防護服を必ず着用すること
安全に配慮して作業すること 掘削深さ1.5m超の箇所には土留め支保工を設置し、作業前に変形・ゆるみがないか目視確認すること

記載の基本構造は「どの作業中に・何をすること(禁止/実施)」です。 「〇〇作業中は△△すること」という文型を統一するだけで、指示の明確さが格段に上がります。

KY活動との連動

作業指示書の安全注意事項は、その日の危険予知(KY)ミーティングの出発点にもなります。 前日の終礼または当日朝礼の前に職長が内容を確認し、「今日の危険ポイント」として作業員に周知することで、指示書の内容が形式的な書類にとどまらず、現場の行動に直結します。

記入例:鉄骨建方作業・高所配線作業

記入例① 鉄骨建方作業

記入例
工事名〇〇ビル新築工事(S造 地上5階)
作業日時2026年3月10日(火) 8:00〜17:00
作業場所3階床面 通り軸A〜C・1〜4番
作業内容鉄骨柱・梁の建方、ボルト仮締め・本締め
協力会社名〇〇建鉄株式会社
従事人数鳶工:4名 合図師:1名
使用機械25t油圧クレーン(〇〇リース)、電動レンチ
安全衛生責任者山田 太郎(〇〇建鉄)

安全注意事項 1. 高さ2m以上での鉄骨上作業は、フルハーネス型安全帯を使用し、親綱に確実に掛けてから移動すること。
2. クレーン作業中は吊り荷直下への立入りを全面禁止。立入禁止ロープを張り、合図師のほかは近づかないこと。
3. ボルト締め作業前に手袋・ヘルメットのあごひもを確認し、工具の落下防止ストラップを取り付けること。
4. 強風(10m/s以上)の場合は作業を中断し、職長の指示を待つこと。
5. 作業開始前に元請担当者との合同KYを実施し、サインを行うこと。

緊急連絡先現場監督:鈴木 次郎 090-XXXX-XXXX/最寄り救急:119
元請確認鈴木 次郎(印)
職長確認山田 太郎(印)

記入例② 高所電気配線作業(内装仕上げ後)

記入例
工事名〇〇ビル新築工事 電気設備工事
作業日時2026年3月12日(木) 9:00〜16:00
作業場所2階天井内(GL+4.2m)電灯幹線配管・入線
作業内容可搬式作業台(2段)を使用した天井内配管・引込線の入線作業
協力会社名〇〇電設株式会社
従事人数電気工:3名
使用機械可搬式作業台(最高部H=1.8m)、電動ドリル
安全衛生責任者佐藤 健一(〇〇電設)

安全注意事項 1. 可搬式作業台は水平な床面のみで使用し、使用前にステップの破損・ぐらつきがないかを確認すること。
2. 作業台に乗ったまま横移動は禁止。必ず一度降りて台を移動すること。
3. 電動工具・電線ドラムは作業台上に置かず、手元補助者が下で管理すること(工具落下防止)。
4. 天井内で鉄筋・スラブ端部に頭部が触れる可能性があるため、ヘルメット着用を徹底すること。
5. 充電部が近接する箇所では検電器で確認後に作業を開始し、活線部にはテープ養生を施すこと。

緊急連絡先現場監督:鈴木 次郎 090-XXXX-XXXX/最寄り救急:119
元請確認鈴木 次郎(印)
職長確認佐藤 健一(印)

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元請提出用フォーマットを整えるポイント

元請会社から「書式を統一してほしい」と求められることは多くあります。元請が求める書式に合わせつつ、現場で実用的に機能するフォーマットを作るためのポイントを整理します。

1. 元請の書式確認を最初に行う

現場によっては「全建統一様式」や元請独自の安全書類様式が指定されているケースがあります。工事開始前のキックオフミーティングで、作業指示書を含む安全書類の様式・提出方法・提出タイミングを必ず確認してください。 後から書式を変更すると、過去分の修正が発生し余計な手間が増えます。

2. 電子・紙の提出形式を合わせる

近年、元請がGreenFile.workやANDPADなどのクラウド安全書類システムを導入しているケースが増えています。 指定システムへの入力方法を事前に確認し、紙の書式と入力様式が矛盾しないようにしておくと、二重作業を防げます。

3. 「作業標準」と「当日の指示」を分けて整理する

繰り返し行う作業(型枠解体、配管工事など)については、あらかじめ「作業標準書」として手順と安全措置を定め、毎日の作業指示書にはその参照番号と当日固有の追加注意事項だけを書く形にすると、記載の手間が減り、かつ品質が安定します。

4. 改訂履歴を残す

作業内容・人員・機械が変更になった場合は、旧版に線を引いて残すか、電子管理なら版番号を更新してください。 監督署の調査時に「どの時点でどんな指示を出したか」を追跡できる状態にしておくことが重要です。

現場でよくある記載ミスと修正例

元請の安全巡視や監督署の立入調査で指摘を受けやすい記載ミスを、修正例とあわせて確認しておきましょう。

よくあるミス 問題点 修正例
日付が空欄または「毎日」 いつの作業に対する指示か特定できない 必ず作業実施日(年月日)を記入。複数日にまたがる場合は日付範囲を明示
安全措置欄が「注意すること」のみ 何をどうすべきか伝わらない。是正勧告対象になりやすい 「高さ2m以上ではフルハーネス型安全帯を使用し、親綱に掛けること」と行動レベルで記載
安全衛生責任者欄が未記入 労働安全衛生法第16条の違反となる可能性 下請会社の選任済み安全衛生責任者の氏名を必ず記入
職長のサインがない 指示が伝わったことを証明できない 職長が朝礼前に内容確認し、自署またはスタンプで確認を残す
前回からのコピーで日付・場所だけ変更 作業内容や危険ポイントが実態と乖離する 作業工程に合わせて安全注意事項・使用機械を毎回見直す
緊急連絡先が「監督員まで」のみ 当人が不在の場合に連絡できない 電話番号を記載。最寄りの救急・消防の番号も合わせて記入
監督署の立入調査で見られやすいチェックポイント 労働安全衛生規則の改正(令和7年4月施行分を含む)では、危険な場所への立入禁止・退避措置の対象範囲が拡大されています。作業指示書の安全措置欄で「立入禁止区画の設定方法」と「退避のタイミング」を具体的に記載しておくと、法令対応状況のエビデンスにもなります。

AI活用で作業指示書の作成時間を短縮する

現場監督や職長にとって、安全書類の作成は業務時間の中で大きな比重を占めます。 「現場を回りたいのに、事務所でパソコンを叩いている時間が長すぎる」という悩みは多くの現場担当者が抱えているものです。

近年、建設業向けのAIツールが安全書類の作成支援に対応するようになっており、作業内容・使用機械・作業場所といった基本情報を入力するだけで、安全注意事項の下書きや危険ポイントのリストアップを自動生成できる機能が登場しています。 AIが生成した文章をたたき台にして、職長が現場固有の情報を加筆・修正するという使い方が実務に合っています。

AIツール活用のメリットと注意点

メリット 注意点
安全注意事項の下書きを数秒で生成できる 生成内容を必ず担当者が確認・修正してから使用する
記載漏れ(安全衛生責任者欄など)をチェックできる 現場固有のリスク(地盤特性など)は人が追記する
過去の指示書をテンプレートとして再利用しやすい 毎日同じ内容にならないよう作業進捗に合わせて更新する
電子記録として検索・保管が容易 元請が指定するシステムとの互換性を事前確認する

AIはあくまで作成補助の手段です。最終的な内容確認と責任者サインは必ず人間が行う必要があります。 「AIが作ったから大丈夫」ではなく「AIで効率化し、人が確認する質の高い書類」を目指すことが重要です。

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まとめ:作業指示書の質が現場の安全水準を決める

作業指示書は単なる書類提出の義務ではなく、現場で働く作業員の安全を守るための実務コミュニケーションツールです。

令和6年の統計が示すとおり、建設業での死亡災害はまだ年間232人に上ります。書類の精度を高めることが、現場の安全水準を底上げする第一歩です。

主な参考・出典
厚生労働省「令和6年 労働災害発生状況について」(2025年5月公表)
厚生労働省「元方事業者による安全衛生管理指針」
建設業労働災害防止協会「建設業における労働災害統計」
社会保険労務士PSRネットワーク「建設業の安全衛生対策 令和7年4月から退避・立入禁止等の措置の対象を広げる」

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